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広島地方裁判所 昭和38年(ワ)574号 判決 1975年12月17日

参加原告

旭科学合資会社

右代表者

池田峯

参加原告

池田埩吾

参加被告

右代表者法務大臣

稲葉修

右指定代理人

中川康徳

外一名

主文

参加原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、参加原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(参加原告ら)

参加被告は参加原告旭科学合資会社(以下、旭科学という。)に対し、金八四〇、〇〇〇円と、内金七〇〇、〇〇〇円に対する昭和四六年六月九日から、内金一四〇、〇〇〇円に対する昭和四七年一二月七日から各完済まで、それぞれ年五分の割合による金員を支払え。

参加被告は参加原告池田吾に対し、金八六〇、〇〇〇円と、内金三〇〇、〇〇〇円に対する昭和四六年六月九日から内金六〇、〇〇〇円に対する昭和四七年一二月七日から、内金五〇〇、〇〇〇円に対する昭和四八年五月一七日から各完済までそれぞれ年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、参加被告の負担とする。

(参加被告)

主文と同旨

第二  当事者の主張

(請求原因)

一、別紙目録記載の各物件(以下、本件物件ともいう。)は、訴外高坂景正が所有していたところ、同訴外人は、昭和一八年七月一八日に広島地方裁判所属公証人岡崎与六作成第五五七七九号遺言公正証書(以下、景正遺言書ともいう。)により遺言をし、同月二一日に死亡した。

二、高坂景正の妻訴外高坂浪子は、右遺言により本件物件を含む景正の遺産につき管理処分権を遺贈されたので、昭和二二年三月一八日に右遺産に属する不動産全部を訴外久代村農業会に売渡し、同農業会は、さらに、同年五月一九日に参加原告旭科学合資会社(以下、旭科学という。)に対し、右不動産全部を譲渡した。その後、参加原告旭科学は、昭和二四年一一月一一日、参加原告池田に対し右不動産全部に対する一〇分の三の持分権を贈与した。その結果、本件物件を含む景正の遺産に属する不動産につき、参加原告旭科学は一〇分の七、参加原告池田は一〇分の三の各共有持分権を有している。

三、ところで、前記景正の死後である昭和一八年一二月三〇日に当時の久代村(現在東城町)長に対し、景正遺言書によつて訴外高坂晃正が景正の家督相続人に指定された旨の届出がなされ、その結果、晃正を景正の家督相続人とする戸籍が編成された。

しかしながら、右晃正名義の戸籍は、次の理由により無効である。

1 景正、浪子夫婦は、訴外高坂昭正、同文子夫婦との間で、次に同夫婦に男子が出生すれば景正、浪子夫婦の養子とする旨の養子縁組の予約をしていたところ、同年九月五日に晃正が出生した。景正遺言書三条には、「相続人未成年中ハ左記ノ者ヲ以テ其ノ親権ヲ行フモノトス 高坂浪子」とあり、これは親権を行う者浪子を養母とする養子縁組を意味するものである。そして、景正遺言書一条においては、晃正を景正の家督相続人に指定しているが、これは右養子縁組の遺言と相容れないこととなり、結局、先になされた一条の遺言は、後になされた三条の遺言により取消されたものと解すべきである。

仮にそうでないとしても右のとおり、養子縁組予約が成立しているから、これに反してなされた家督相続人の指定は無効である。

なお、右三条を後見人を指定したものと解する余地はない。

2 仮にそうでないとしても、景正遺言書一条においては、家督相続人として、第一次的に訴外高坂和正を指定しているが、同訴外人は昭正の長男であつて昭正の法定推定家督相続人であるから、右指定は無効である。そして同条は、和正が相続人となり得ないときは晃正を家督相続人に指定するとしているが、これは不能の条件を付したものであるから、結局無効である。

3 仮にそうでないとしても、文子は、景正遺言書を偽造して同遺言書により遺言執行人に指定された訴外高坂穏を欺き、昭和一八年一二月三〇日に当時の久代村長に対し晃正を景正の指定家督相続人として届出させた。したがつて、文子及びその子晃正は、昭和二二年法律二二二号による改正前の民法(以下、旧民法という。)九六九条五号により景正の相続については欠格者であつて、景正の家督相続は無効である。

仮にそうでないとしても、高坂穏は、右家督相続届出の意思表示を瑕疵ある意思表示として、昭和二二年六月七日右届出の意思表示を取消した。したがつて、晃正の家督相続は無効である。

4 参加原告らの右主張は、(1)原告旭科学、被告晃正外一名間の広島地方裁判所福山支部昭和二六年(ワ)第一三二号所有権等確認請求事件(以下、一三二号事件という。)について、被告晃正の法定代理人(財産管理権者)浪子が、原告の「本件山林が原告の所有であることを確認する。被告晃正は原告に対し本件山林について所有権移転登記手続をせよ。」等の請求を認諾していること、(2)原告浪子、被告高坂穏間の広島地方裁判所三次支部昭和二三年(ワ)第一三号戸籍抹消請求事件(以下、一三号事件という。)において、原告が、比婆郡久代村二四七二番地高坂景正の戸籍中、比婆郡東城町大字東城一三七番地戸主高坂昭正二男晃正を家督相続人に指定遺言執行者高坂穏届出昭和拾八年拾弐月参拾日受附とある部分の無効確認及びその抹消手続を求めたのに対し、被告が提出した「原告の請求を認諾する旨の判決を求める。請求原因事実はすべて認める。」旨の記載のある答弁書が、昭和二三年六月一八日施行の口頭弁論において陳述したものとみなされ、同日付口頭弁論調書にその旨の記載がなされていること、(3)原告浪子、被告藤井定市間の広島地方裁判所福山支部昭和二五年(ワ)第一五四号認諾確認請求事件(以下、一五四号事件という。)において、右(2)記載の事件において作成された昭和二三年六月一八日付口頭弁論調書が認諾調書であることを確認する旨の和解が成立していること、(4)原告浪子、被告高坂穏外一名間の広島地方裁判所昭和二三年(ワ)第一三八号遺言公正証書確認事件(以下、一三八号事件という。)において、被告高坂穏が、原告浪子、被告神崎勝子間の岡山地方裁判所玉島支部昭和二四年(ワ)第六七号遺言公正証書確認請求事件(以下、六七号事件という。)において、被告が、それぞれ、原告の「本件遺言公正証書は、原告高坂浪子に対し景正の遺産についてその管理処分権を遺贈したものであることを確認せよ。」等の請求を認諾する旨陳述していること、(5)原告浪子、被告目瀬恒、同広戸武吉間の岡山地方裁判所津山支部昭和二四年(ワ)第一二六号親族会議確認請求事件(以下、一二六号事件という。)において、被告らが、原告の「高坂晃正親族会が昭和二二年九月二二日になした『高坂浪子が昭和二二年三月景正の全遺産を代金三五万円で久代村農業会に対し売渡担保したこと等の決議の存在及びその決議が確定していることを確認せよ。』との請求を認諾する旨陳述していることにより、裁判上確定している。また、昭和二二年四月一一日招集の親族会は、「高坂景正妻高坂浪子ハ亡夫景正遺産ニツキテ其ノ管理支配権ヲ景正ヨリ遺贈セラレ之ヲ承諾シ居ルコト」等の決議をし、同年九月一二日招集の親族会は、「昭和弐拾弐年参月高坂浪子ハ景正遺産ニツキ納税ノ為メ全遺産ヲ代金参拾五万円ヲ以テ久代村農業会ニ対シ売渡担保セシコト」「亡高坂景正ノ家督相続人ニ其妻高坂浪子ヲ選定セシコト」等の決議をし、いずれに対しても裁判所に対し不服の訴を提起した者はなく、右決議は確定している。

四、しかるに、東城町長は、前記無効な晃正名義の戸籍を閲覧に供し、かつ、晃正の母文子が右戸籍謄本を悪用して参加原告ら所有の本件物件を他に処分するという事情を知りながら右晃正の戸籍謄本を文子に交付した。そして、文子は、晃正の親権者と称して、右戸籍謄本を利用し、別紙目録記載一ないし五の各山林を訴外岩本セイに売却し、昭和三〇年七月四日その旨の登記を経由し、同目録六記載の山林を訴外藤越ヨシエに売却し、同年九月二六日その旨の登記を経由し、同目録七記載の山林を訴外明治信用金庫に売却し、昭和三一年一月二八日その旨の登記を経由し、同目録八記載の山林を訴外木戸谷林業株式会社に売却し、昭和三〇年二月二六日その旨の登記を経由し、同目録九記載の山林を訴外吉本健二郎に売却し、同年四月三〇日その旨の登記を経由し、同目録一〇記載の宅地を訴外三原茂作に売却し、昭和二五年二月二一日その旨の登記を経由し、同目録一一記載の建物を訴外山本集一に売却し、それぞれ別紙目録損害欄記載のとおりの損害を参加原告らに与えた。

五、参加原告らの右損害は、東城町長、文子らの共同不法行為によつて生じたものと言うべきところ、東城町長の掌理する戸籍事務は被告国の委任事務であるから、被告は東城町長の右不法行為につき国家賠償法に定めるところに従つて参加原告らに対し右損害の賠償をする義務がある。

六、よつて、参加原告らは被告に対し右損害金の内金として、参加原告旭科学は金八四万円と、内金七〇万円に対する昭和四六年六月一日付請求の趣旨拡張の申立書送達の日の翌日である昭和四六年六月九日から、内金一四万円に対する昭和四七年一二月六日付請求の趣旨拡張の申立書送達の日の翌日である昭和四七年一二月七日から、参加原告池田吾は金八六万円と、内金三〇万円に対する昭和四六年六月一日付請求の趣旨拡張の申立書送達の日の翌日である昭和四六年六月九日から、内金六万円に対する昭和四七年一二月六日付請求の趣旨拡張の申立書送達の日の翌日である昭和四七年一二月七日から、内金五〇万円に対する昭和四八年五月一〇日付請求の趣旨拡張の申立書送達の日の翌日である昭和四八年五月一七日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告の答弁)

一、請求原因事実は、争う。

二、財産の管理処分権は財産ではないから、これを遺贈したとしてもその効力を生じない。

三、晃正の戸籍の記載は正当であるが、仮に無効なものだとしても、いつたん戸籍の編成がなされ、戸籍の謄抄本等の請求がなされれば、戸籍吏は原則としてこれを拒むことはできない(戸籍法一〇条)。したがつて、東城町長が文子に対し晃正の戸籍謄本を交付したことは正当であつて、違法なものではない。

四、仮に被告に損害賠償義務が生じたとしても、右は時効によつて消滅している。

すなわち、別紙目録記載の各物件(但し、一一を除く。)については、参加原告旭科学のために処分禁止の仮処分の決定がなされ、同目録一ないし五の物件については昭和二三年二月四日、同六記載の物件については同二二年一二月二七日、同七ないし九記載の物件については同二四年一月一七日、同一〇記載の物件については同二五年一〇月二三日、それぞれその旨の登記を経由しているから、右各登記を経由した頃に、参加原告らはそれぞれの物件についてその損害及び加害者を知つたはずである。

ところが、参加原告らは、その時から三年以上経過した昭和三二年九月一六日に至つて、はじめて、本件損害賠償請求をしたものである。

第三  証拠関係<略>

理由

一<証拠>を総合すれば、別紙目録記載の各物件は景正が所有していたところ、同人は、昭和一八年七月一八日に広島地方裁判所所属公証人岡崎与六作成第五五七七九号遺言公正証書により別紙のとおりの遺言をし、同月二一日に死亡したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

二参加原告らは、景正の妻浪子が景正遺言書により別紙目録記載の各物件を含む景正の全遺産につき管理処分権を付与された旨主張するので検討するに、旧民法一〇六四条にいわゆる財産の処分とは、遺産制度の趣旨からして、受遺者に対し財産上の利益を与える出捐行為をいうものと解すべきところ、遺産の管理処分権それ自体は、単に当該遺産につき法律行為等をなし得る権限にとどまり、管理処分権者に財産上の利益を得させるものではないから、それだけを独立して遺言により付与することはできないものといわざるを得ず、したがつて、浪子が景正からその遺産の管理処分権を遺贈されたものと解しうる余地はない。

ところで、景正遺言書三条には、相続人未成年中は浪子をその親権を行う者とする旨定められ、<証拠>によれば、景正遺言書一条において指定された家督相続人は、いずれも高坂昭正の実子であり、景正の死亡当時未成年であつたことが認められるところ、未成年の子に対する親権は、旧民法においては、家を同じくする父若しくは母という身分に基づいて発生するものであり、一方、家督相続人の指定は、単に被指定者に指定者の家督を相続させる効力を生ずるにとどまり、これによつて、被指定者と指定者及びその親族との間に何らの親族関係も生ずるわけではない。そうすると、景正遺言書一条によつて指定された家督相続人と親子関係のない浪子は、その親権者となるに由なく、結局、右三条は無効という外ない。

なお、参加原告らは、晃正出生前に、景正、浪子夫婦と昭正文子夫婦との間に晃正を景正、浪子夫婦の養子とする旨の養子縁組の予約をしていたことからすれば、右三条は親権を行う者浪子を養母とする養子縁組を意味するものと解すべき旨主張する。右遺言書一条においては家督相続人を指定しているから、仮に右三条が参加原告ら主張のとおりの意味を持つものとすれば、同一遺言書に前後矛盾する条項を含むこととなる。公証人関与の下に作成された本件遺言書にこのような相矛盾する条項が漫然録取されたものとは考えられないし、仮に景正の生前に参加原告ら主張のような事情があつたとしても、かかる結果を招来してまで、その文言を離れて、右三条を参加人ら主張の如き趣旨を含むものと解しうべきものではなく、参加原告らの主張は採用できない。

三参加原告らは、晃正の家督相続が無効である旨種々主張する。

しかしながら、仮に参加原告ら主張の如く養子縁組の予約が成立していたとしても、身分関係におけるかかる予約関係は、何時でも、何らの理由も要さずに、一方的に解消しうるものと解せられ、景正遺言書一条が無効であるというよりも、むしろ右予約関係は、これと相容れない内容の右一条によつて、いわば黙示的に取消されたものというべきである。また、<証拠>によれば、景正遺言書一条により景正の第一順位の家督相続人に指定された和正は、戸主昭正の長男であつて、その法定推定家督相続人であることが認められるところ、他家の法定推定家督相続人も、本家相続の必要がある場合には本家に入ることができることはもとより、それ以外の場合であつても、離籍又は廃除により他家に入ることができるのであるから、他家の法定推定家督相続人を家督相続人に指定しても、直ちにこれを無効とすべきものでもない。また、景正遺言書一条の如き推定方法を公序良俗に違反するとすべき理由はないし、かかる方法によつて身分関係が不安定なものになるわけのものでもない。さらに、仮に参加原告ら主張の如く文子が景正遺言書を偽造したとしても、これによつてその子である晃正が相続欠格者となるはずはないし、また、<証拠>を総合すると、右遺言書により第一順位の家督相続人に指定された和正は、昭和一八年一二月一四日に相続を放棄し、第二順位に指定された晃正が家督相続人となり、同月三〇日に遺言執行者高坂穏がその旨届出、その結果、晃正を景正の家督相続人とする戸籍が編成されたことが認められるから、右戸籍の記載は正当であり、仮に参加原告ら主張の如く右高坂穏が右届出の取下ないし撤回の意思を表明したとしても、既になされた右戸籍の記載を抹消することは許されないから結局、右晃生の戸籍若しくは晃正の家督相続を無効と解すべきいわれはない。

四なお、参加原告らは、その主張は裁判上、あるいは親族会の決議によつて確定している旨主張する。

しかしながら、<証拠>によれば参加原告ら主張のとおりの認諾調書が作成されていることが認められるものの、同時に、同号証によれば、晃正の法定代理人(財産管理権者)として浪子が右事件原告の請求を認諾していることが認められるところ、浪子が晃正の財産管理権者ではなく、また、法定代理人でもないことは前記二で説示したところから明らかであるから、右認諾による効力が晃正に及ぶことはなく、また、<証拠>を総合すれば、参加原告ら主張のとおり、一三号事件において、被告の「原告の請求を認諾する旨の判決を求める」旨記載のある答弁書が陳述したものとみなされ、口頭弁論調書にその旨の記載がなされており、一五四号事件において和解が成立し、一三八号、六七号、一二六号各事件において、右各事件の被告が原告の請求を認諾する旨陳述していることが認められるが、右各事件における認諾の陳述等が法律上の効果を生ずるとしても、右各事件における既判力が右各事件の当事者以外の者に及ぶものではなく、本件事件の判断にあたつてこれに拘束されるいわれはない。

さらに、景正の家督相続人に妻浪子を選定する旨の決議は、晃正が景正遺言書により家督相続人に指定されていること前説示のとおりである以上、当然に無効なものといわざるを得ず、その余の決議事項に至つては、旧民法上意味を持ち得るものであるか甚だ疑問であつて、その効力を認めるに由ない。

五以上のとおり、本件全証拠を真に検討しても、浪子が、自ら又は法定代理人として、景正の遺産につきこれを処分する権限を有していたことを認めることができないから、これを前提とした参加原告らの本件各請求は、その余の点について判断するまでもなく失当である。

六よつて、参加原告らの本件各請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(五十部一夫 若林昌子 上原茂行)

目録<省略>

遺言公正証書

第壱条 遺言者ニハ法定推定家督相続人ナキヲ以テ広島県比婆郡東城町大字東城百参拾七番地高坂昭正ノ長男高坂和正ヲ相続人ニ指定ス

高坂和正カ相続人ト為リ得サルトキハ高坂昭正ノ弐男高坂晃正ヲ相続人ニ指定ス

右両名カ相続人タリ得サルトキハ高坂武子ヲ相続人ニ指定ス

第弐条 遺言者死亡ニ因リ受取ルヘキ保険金中金参万五千円也ヲ妻高坂浪子ニ遺贈ス保険契約中受取人カ高坂浪子ト為レルモノノ中右金額ヲ超過スル部分ハ相続人ニ還付スヘシ

妻浪子カ左ノ条項ニ抵触シタルトキハ前項ノ遺贈ヲ為サス

(イ) 不行跡アリタルトキ

(ロ) 故ナク戸ヲ詰メ他行セルコト

第参条 相続人未成年中ハ左記ノ者ヲ以テ其ノ親権ヲ行フモノトス

高坂浪子

第四条 親権ヲ行フ者ノ監督人ヲ左記ノ者トス

第壱順位 高坂昭正

第弐順位 目瀬吉次

第参順位 目瀬恒

右監督人ニ対スル報酬ハ左ノ通リトス

月額金五拾円トシ別ニ車馬賃実費ヲ支払ウコト

第五条 相続人未成年中ニ親権ヲ行フ者カ壱回ニ壱物件ニ付処分シ得ル財産ハ左ノ限度以下トス

金弐百円也トス但定期的収入ハ此限ニアラス

右限度以上ニ付処分スル場合ハ左記ノ者ノ協議承認ヲ必要トス但定員参名トス

第壱位 高坂昭正

第弐位 高坂穏

第参位 目瀬吉次

第四位 足羽敏政

第五位 小野寧次郎

第六位 田外均

第六条 妻浪子ハ六拾歳ニ達スル迄ハ遺贈ヲ受ケタル財産ヲ自由ニ使用スルコトヲ得ス

第七条 妻浪子ハ相続人カ成年ニ達スル迄ハ之ヲ実子同様愛撫育成スルコト

尚武子カ中等教育終了後他家ニ嫁スル場合ハ最低式服ヲ整備シテ遣ハスコト

第八条 高坂家ニ於テ山林ヲ取扱フ場合ニ於テハ

(イ) 針葉樹林

(ロ) 単純針葉樹林(杉、檜)

右間伐材横積量計算ノ上ニテ処分スルコト

一、薪炭山ヲ取扱フ場合ニ於テハ針濶混合林ノ内濶葉樹ノミヲ製品処分シ(炭又ハ薪トス)且針葉樹ハ相当ノ母樹ヲ残シテ処分スルコト

一、来ル昭和弐拾五年迄ハ新ニ造林ヲ為ササルコト

第九条 遺言者ハ遺言執行者ヲ左ノ如ク指定シタリ

広島県比婆郡久代村

遺言執行者 高坂穏

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